アメリカ向け機械設備の安全規格対応(OSHA 29 CFR 1910のポイント解説)

*この記事は、2025年05月14日に公開された記事です。
米国労働安全衛生局 (OSHA:Occupational Safety and Health Administration)が定めるOSHA 29 CFR 1910 (Code of Federal Regulations 連邦規則集 Title 29 – Labor, Part 1910)とは、一般産業(General Industry)向けの労働安全衛生基準をまとめた法律で、労働者の安全と健康を守るための包括的なルールを定めています。
OSHAは、アメリカの労働者の安全と健康を守るための連邦政府機関です。
アメリカへ機械製品を輸出する場合に、機械設備の製造者が遵守すべき機械安全に関する要求になります。
OSHA 29 CFR 1910は、産業機械、電気制御盤、現地作業に関する安全性などが定められ、NFPA 70 (NEC)や、NFPA79、UL508Aなどの規格と併せて適用されます。
日本国内メーカーが、アメリカへ制御盤や生産設備を輸出する場合、UL508A、NFPA79と並んでOSHAの要求事項を満たすことが求められます。
現地の設置業者やユーザーから、フィールドラベルの取得やOSHA規則、NFPA79などの安全規格の準拠証明、リスクアセスメントを提出するよう依頼されるケースも増えています。
アメリカ現地のOSHAの監査などで、これらの安全法規に違反していることが発覚した場合、現地ユーザーである企業は、使用停止命令や罰金などの罰則が科され、機械の製造メーカーは、損害賠償などの訴訟リスクを抱えることになります。
- 1. OSHA 29 CFR 1910の概要
- 2. 日本企業(機械製造メーカー)が押えておきたいポイント
- 2-1. 各安全規格への適合
- 2-2. リスクアセスメントの実施
- 2-3. 技術文書の作成
- 2-4. コンサルティングサービスの活用
- 3. イーエムテクノロジーのサービス
1. OSHA 29 CFR 1910の概要
下記に、OSHA 29 CFR 1910のサブパートの一覧と概要を記載致します。
サブパート | タイトル | 解説 |
---|---|---|
Subpart A | General 総則 | 規則の目的、定義、適用範囲などの基本事項を定めています。 |
Subpart B | Adoption and Extension of Established Federal Standards 既存連邦規格の採用と拡張 | 他の連邦規格の採用や拡張に関する規定です。 |
Subpart C | [Reserved] 【留保】 | 現在、特定の規定はありません。 |
Subpart D | Walking-Working Surfaces 歩行・作業面 | 作業場の床や通路の安全性、転倒防止策などに関する規定です。 |
Subpart E | Exit Routes and Emergency Planning 出口ルートと緊急時対応計画 | 緊急時の避難経路や計画に関する要件を定めています。 |
Subpart F | Powered Platforms, Manlifts, and Vehicle-Mounted Work Platforms 動力プラットフォーム、マンリフト、車両搭載作業台 | 高所作業用の設備や機器の安全基準に関する規定です。 |
Subpart G | Occupational Health and Environmental Control 作業環境および産業衛生管理 | 作業環境の衛生管理や健康リスクの制御に関する規定です。 |
Subpart H | Hazardous Materials 危険物 | 危険物の取り扱いや保管に関する安全基準を定めています。 |
Subpart I | Personal Protective Equipment 個人用保護具(PPE) | 労働者の個人用保護具の選定、使用、維持に関する規定です。 |
Subpart J | General Environmental Controls 環境管理(一般) | 作業環境の一般的な管理に関する要件を定めています。 |
Subpart K | Medical and First Aid 医療および応急処置 | 職場での医療サービスや応急処置の提供に関する規定です。 |
Subpart L | Fire Protection 火災保護 | 火災の予防、検出、消火設備に関する安全基準を定めています。 |
Subpart M | Compressed Gas and Compressed Air Equipment 圧縮ガスおよび圧縮空気装置 | 圧縮ガスや空気装置の安全な使用と保守に関する規定です。 |
Subpart N | Materials Handling and Storage 材料の取り扱いと保管 | 材料の運搬、保管、積み下ろしに関する安全基準を定めています。 |
Subpart O | Machinery and Machine Guarding 機械および機械の防護 | 機械の危険部位の防護や安全装置に関する規定です。 |
Subpart P | Hand and Portable Powered Tools and Other Hand-Held Equipment 手工具および携帯電動工具など | 手持ち工具や携帯電動工具の安全な使用に関する規定です。 |
Subpart Q | Welding, Cutting, and Brazing 溶接、切断、ろう付け | 溶接や切断作業における安全対策に関する規定です。 |
Subpart R | Special Industries 特定産業(木材加工、繊維、印刷など) | 特定の産業に特有の安全衛生要件を定めています。 |
Subpart S | Electrical 電気 | 電気設備の設計、設置、保守に関する安全基準を定めています。 |
Subpart T | [Reserved] 【留保】 | 現在、特定の規定はありません。 |
Subpart U | Ethylene Oxide エチレンオキシド | エチレンオキシドの使用に関する安全基準を定めています。 |
Subpart V | Commercial Diving Operations 商業潜水作業 | 潜水作業における安全対策に関する規定です。 |
Subpart W | [Reserved] 【留保】 | 現在、特定の規定はありません。 |
Subpart Z | Toxic and Hazardous Substances 有害・有毒物質 | 有害物質のばく露制限や管理に関する安全基準を定めています。 |
OSHA 29 CFR 1910の各パートには、電気安全、機械ガード、ロックアウト、有害物質の管理、作業プラットフォームなどが定められております。
サブパートSの「電気」は、NFPA 70 (NEC)に準拠した電気安全に関する詳細を含む重要なパートです。
2. 日本企業(機械製造メーカー)が押えておきたいポイント
アメリカでは、機械の製品安全、アメリカ現地の労働安全の両面から、現地納入先企業(ユーザー)様と日本企業(製造者)様の両方が、アメリカ現地の労働者の安全を守らなければなりません。
後々の事故が発生した時のことも考えて、アメリカ現地ユーザーと法規の遵守、機械の安全性について、十分に議論しておくべきです。
ここでは、日本企業(機械製造メーカー)が、アメリカ法規/規格を遵守するために、押さえておきたいポイントをご紹介します。
2-1. 各安全規格への適合
アメリカの安全規格に対応した製品にするためには、OSHA 29 CFR 1910だけでなく、NFPA70(NEC)、NFPA79、UL508Aなどの安全規格にも適合するように設計/製造を行わなければなりません。
何も規格を考慮していない製品をそのまま出荷することになると、後々、現地で大幅なNGの修正対応や、技術文書の作成対応などを行わなければなりません。
できれば、設計段階から北米規格の要求を盛り込んで、国内で北米安全法規/規格に適合した製品を出荷することが重要です。
日本国内で規格適合の対応を行うことで、後戻り工程や現地での改造コストを大幅に削減することが可能です。
機械/電気の構造面では、設計段階から盛り込んでおかないと、出荷前の完成ではカバーできない部分が生じてくる可能性もございます。
北米安全規格に適合する製品設計/製造、文書類の作成に早めに取り掛かることをおすすめ致します。
2-2. リスクアセスメントの実施
アメリカの現地ユーザー企業では、リスクアセスメントの提出や説明を求められるケースが一般的です。
アメリカ現地ユーザー企業様に、機械製造者側が行ったリスクアセスメントを的確に伝えることで、納入までのトラブルを少なくすることもできます。
製品設計段階から現地ユーザー企業様にもチェックをしてもらうことで、生産性と安全性のバランスを考えた製品対応を行うことができます。
リスクアセスメントでは、想定し得る事故/トラブルを盛り込んだ安全設計を行うため、製品安全と労働安全の観点から、アメリカ現地労働者を守ることができ、OSHAによる罰則違反のリスクや損害賠償責任に関するリスクを大幅に低減することができます。
2-3. 技術文書の作成
設計段階から、適用される規格で要求される文書の作成、エビデンスの収集を行っておくことで、日本企業(製造者)様もユーザー企業様も、現地受け入れ、輸送、据付、試運転、検収までスムーズに進みます。
2-4. コンサルティングサービスの活用
アメリカのOSHAやNFPA、UL規格などの安全規格に適合させるためには、製品設計の初期段階から現地規格を考慮した設計対応が重要です。
アメリカの製品安全に詳しい技術コンサルティングサービスを活用することで、安全規格に適合する製品設計/製造が可能です。
これにより、現地のユーザー企業様とのやり取りにおいても、安全性に関する要求や指摘にスムーズかつ的確に対応することが可能になります。
また、こうした規格対応を通じて、製造者としての製品安全性を高めると同時に、使用者であるユーザー様の現場での安全運用を実現することができます。
製造者様による安全な製品設計と、ユーザー様による安全な運用の両面から、事故の未然防止と市場における信頼性の向上につながります。
3. イーエムテクノロジーのサービス
イーエムテクノロジーでは、アメリカ市場への納入を見据えた製品の「安全規格対応」や「現地法令への適合」を支援する技術コンサルティングサービスを提供しています。
設計段階では、規格のよくある指摘ポイントへの対策や構造上の重欠点を対策していくことが重要です。
安全規格に精通した弊社の専門エンジニアたちが、設計段階から北米の安全要求を考慮し、製品構造、回路、部品選定まで具体的にアドバイス致します。
安全規格への適合を証明するには、設計図、回路図、コンポーネントリスト、安全関連の証明書類などの整備が不可欠です。
慣れない文書作成、エビデンスの収集などについても、当社エンジニアのほうで作成させて頂くことも可能です。
また、現地ユーザー様とのやり取りについて、サポートも致しておりますので、なるべくお客様のお手間をとらせずに、進めていくことが可能です。
国内で安全規格対応を完了することで、現地でのトラブルや追加コストを大幅に削減できます。
アメリカの労働安全は非常に厳しく、安全規格に準拠していない製品は現地で稼働できない可能性があります。
トラブルを未然に防ぎ、日本企業の信頼性を高める安全設計・適合証明を、イーエムテクノロジーが全力で支援いたします。
イーエムテクノロジーでは、お客様のご迷惑になるようなしつこい営業電話、メール配信などは行っておりませんので、アメリカ向け機械製品の規格対応について、お困りごとなどございましたら、お気軽にお声がけ頂ければと思います。
関連ページ「NFPA79,UL508A,CSA C22.1,SPE-1000等の適合支援」
